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熊襲 巻一
著 者:桑原 啓介
内 容:歴史小説
出版社:To写堂印刷
初 版:2009年4月
価 格:1200円
頁 数:297頁
販 売:市内各書店

著者紹介
 桑原 啓介(くわはら けいすけ)
  昭和22年 明治大学中退し、本場大島紬の製造を父と共に宮崎県都城市で創業。宮崎県の地場産業となり、昭和42年には高松宮殿下の本社工場御見学。数々の技術開発を行い、大島紬の芸術的な特殊織技術の道を開き、「総地経」「光と影」「記紀の彩」で特許取得。事業のかたわら文学にもいそしむ。
  昭和42年 文芸誌「笛」を中山正道氏と共に発刊
  昭和45年 郷土文芸誌「霧」を発刊主宰、現在84号
  昭和58年 詩歌集「早朝」三代の賦刊行
  昭和63年 第二詩集「五家荘」
  平成 6年 第三詩集「旅情」
  平成 9年 文化貢献により
都城市文化賞を受賞
  平成15年 第四詩集「天舟」


あとがきより

 天孫降臨の高千穂の峯の東 日向の平原地帯に、熊襲と呼ばれる荒ぶる部族が蛮居していた。その奴共は何時何処から此の地にやって来たか分らないが、古来より岩窟に住まい 有難い皇恩に服せず、悪掠無道 徒党を組んで住家を襲い 穀物を奪い、家財を掠奪しては住民を困らせていた。
戦前 小学校の教師から教え込まれた熊襲の横顔である
旧制中学に入り 憶え込まされた軍人勅諭の中に「まつろわぬ者共を打ち平らげ給いて」の「まつろわぬ者」が熊襲蝦夷だらうと思い知らされた。

  中略

戦後 焼けたヾれた呉市を逃れる様に、父祖の地へ引揚げて来たが その都城は西北に椅立する霧島火山群 高千穂の峯の麓 正しく熊襲の故地であり、皇恩に服しなかったまつろわぬ者とは我が祖先達の事であったのだ。平定後 大和朝廷によって移民遷民が行われ、居住者の血は強圧的に薄められたとは云え、古への人々の血と涙は我々に受け縦がれているのである。
熊襲とあざけられ 悪掠無道とのゝしられつつ 唇を噛みしめ 進攻して来る大和朝廷軍と対峙し 土地を奪われ 家を焼かれた人々の涙 私は血の連なる子孫の一人として 冷静に思いをこらし、失われた歴史を探究し祖先の方々の魂の平安を祈り度いと思ふ。

                         著 者

平成二十一年二月七日



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